みなさんの家にペットはいますか?
生き物と暮らすことは心が豊かになりますし、命の大切さを知るという点においても、とても素敵なことですね。
しかし、咬まれるなど怪我のリスクも少なからずあります。
今回は、犬と暮らす中での怪我と予防策についてのお話です。
生き物と暮らすなら、安全対策も知っておこう
犬咬傷の現状
動物に咬まれた時の怪我を『咬傷(こうしょう)』と言います。
犬に咬まれての怪我=『犬咬傷(いぬこうしょう)』についてお話していきます。
犬咬傷の発生件数
環境省の調査では、2023年度の犬咬傷の件数は、4602人でした。
2023年は死亡例はありませんでしたが、年度によっては死亡例も 3人(年平均)ほど報告されています。
報告されていないケースもあると思うから、目安だよ
こどもの年齢と咬まれた部位
別の報告では、犬咬傷のうち、こどもが咬まれたケースは3-6 割とされています。
国内では、犬咬傷小児例の受傷時年齢は平均 7.3 歳で、男児が3分の2でした。
どこを咬まれることが多いの?
小学生以上では四肢を咬まれることが多いです。
4歳以下の小さなこどもは、約40%が頭や顔を咬まれています。
犬の顔と幼児の頭は 高さが同じくらいだから、小さな子供は頭部を咬まれやすいんだね。
穏やかな種類の犬なら大丈夫か?
どの犬種であっても、犬咬傷は起こる可能性があります。
小型犬であっても、ゴールデンレトリーバーのような穏やかと言われる犬種でも、咬傷の報告があります。
実際の犬咬傷のケースを紹介
小児科学会ホームページにある、Injury Alertからの抜粋です。
陰部の犬咬傷:0歳4か月男児
【自宅のできごと】
兄弟3人(3歳、2歳、0歳4か月)を寝室の布団で寝かしつけました。
その後、大人は隣の部屋のソファーで眠りました。
自宅にベビーベッドはありましたが、使うのは日中だけでした。夜寝るときは、普段から床に敷いた布団にみんなで寝るようにしていました。
家には、室内犬(中型犬)がおり、部屋に自由に出入りできる状態でした。
朝になると、一番下の子(0歳4か月)が泣いているのが聞こえました。
様子を見に行くと裸で泣きながらハイハイをしており、おむつと洋服は破れて血が付いた状態で落ちていました。
陰部から出血があることに気づき、救急車を呼びました。
【病院で】
診察では、両側の陰嚢皮膚の欠損、両側の精巣欠損、陰茎の皮膚欠損、亀頭部分欠損がありました。
破傷風トキソイドを投与されたのち、別の病院へ転院搬送されました。
転院搬送後、ただちに手術が行われました。
事故ケースからわかること
陰部を咬まれるケースは、まれですが報告されています。
陰部受傷21例を集めた報告例では、21例中19例が男児で、ほとんどが精巣欠損などのひどい怪我でした。
乳児例が 3 割もあり、乳児とりわけ男児は、犬による外性器咬傷のリスクが高いといえます。
自分で移動できない月齢の赤ちゃんが多かったみたい
室内の事故ケースでは、犬が自由にこどもの周りに近づける状態が多かったようです。
普段おとなしい犬でも、乳幼児と犬を一緒に放置するのは危ないね
こどもへの教育も必要
動物咬傷は、「動物はキケンだから遠ざけよう!」というだけでは解決しない問題だと思います。
動物がどんな時に嫌がるかを教えることも必要です。
こどもたちは、犬や猫などの動物を見ると触りたがることが多いと思います。
でも、触られるのが好きな子ばかりではありません。
「怒っている」犬だけでなく、「怖がっている」「子犬をつれている」「犬同士で喧嘩している」ような場合に手を出して咬まれるケースもあります。他の動物でも同じです。
むやみに動物を怖がらせないように、幼いうちから、こどもたちに教える必要があります。
犬咬傷の予防法
具体的な対策を考えてみたよ
屋内での対策
短時間でも、こどもと犬を一緒に放置しない
低月齢児はベビーベッドで寝かせる
大人がそばを離れる時は、ペットゲート、サークル、ケージを使う
犬の食事中は手を出さない
屋外での対策
犬同士の喧嘩は、間に入らない
犬の近くで大声を出さない
知らない犬に近づかない、目を合わせない
犬のしっぽを持つなど、嫌がることをしない
子犬がいるところに近づかない
こどもたちとも、共有しよう!
動物に咬まれたらどうする?
咬まれたら、次のようにしてください。
傷口をよく洗う
出血していれば、押さえて止血する
すぐに病院を受診する
犬に限らず、動物の口の中には細菌がたくさんおり、咬まれることで傷から感染するリスクがあります。
傷を完全に塞ぐような、絆創膏は貼らないようにしましょう。
傷の中で細菌が増えてしまうからね
抑えても止まらない出血の場合は、救急車をよぼう!
咬まれてすぐは問題なくても、後から症状がひどくなることもあり、命に関わります。
傷が浅ければ、蜂窩織炎(皮下組織の炎症)、深く骨まで到達していれば骨髄炎になることがあります。狂犬病や破傷風になるリスクもあります。
放置せずに、すぐに病院を受診してください。
【参考文献】
環境省 動物愛護管理行政事務提要(令和3年度版)
犬による咬傷事故状況(全国計:昭和49年度~令和2年度)[PDF 173KB] https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/gyosei-jimu_r03.html
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